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「ことばが遅い…」に悩んだら。知って欲しい、”ことばが育つメカニズム”

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『親になるまでの時間』(「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」115号・116号。ジャパンマニシスト社) より、厳選した4編をご紹介。
最終回のテーマは「ことばの育ち」です。

ことばは草花のように下から育つ

ことばをしゃべれる私たち大人にとって、ことばはまるで空気のようにあたりまえのものです。

だけど、ことばの手前の世界を生きている幼な子にとっては、周囲の大人たちの交わす「ことば」も、まださまざまな情動の色合いをもった「人の声」でしかありません。

その人の声が意味をもったことばになっていくというのは、まさに奇跡のようなことです。

しかもその奇跡が、この世に生まれた多くの人間に自然に起こるのですから、考えてみれば、じつに不思議なことです。

ところが、私たちがこの「人間の自然」を、日常の感覚であたりまえのこととして見てしまうようになると、ことばを人為でもって教えこんだり、覚えこんだりできるかのように思いがちです。でも、それはあきらかに錯覚です。

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高さを競うのは愚かなこと

ことば以前のこどもたちは、周囲の大人たちとまなざしや表情を交わし、身体を触れあわせてさまざまの体験を重ね、まだ意味をなさない声をやりとりして、ことば以前のコミュニケーションをくり広げています。

そのなかで、やがて周囲の人の声が意味をもち、自分の声がことばになっていくのです。

比喩〔ひゆ〕的にいえば、それは土に撒〔ま〕いた種に水をやり肥料をやっているなかで、やがて種が芽を吹き、土のなかから双葉が育っていくようなもの。

やっと出てきた芽を無理に上から引っぱったのでは、伸びるものも伸びません。

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それに、一歳前後にことばが出はじめてからも、すぐにことばは広がらないもので、わっと語彙〔ごい〕が伸びはじめるまでに数ヶ月かかるのがふつうで、一種の停滞期があるのですが、そのときもこどもたちは、そのときそのときのかぎられたことばを最大限にくり出して、周囲の人たちとコミュニケーションしています。

そうして手持ちのことばをしっかり使いこなしていくなかではじめて、次のことばは広がっていきます。

ここでもことばは下から枝葉を広げていくのであって、上から引っぱって伸ばすものではありません。

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あるいは語彙が増えて、二語文、三語文が出てきても、まだ助詞などが入った文章にならず、幼いことばのままであることを悩む人もいますが、そのときだってこどもは幼いことばのままに一所懸命に自分の思いを伝えようとしていて、そのなかで文法的な装置のそなわった文章になっていくわけで、上から文法を教えこんで育つのではもちろんありません。

ことばは人間の自然で、植物のように下から育つもの。

そういうイメージで考えるのがいちばんいいのではないかと私は思っています。

そうだとすると、土から生える草花はまさに千差万別、伸びた背丈を隣とくらべて、どちらが高いかを競うのは愚かなことです。

わが子のことばが生活にしっかり根を下ろし、周囲に枝葉を広げられるようにするためには、こどもがそのときの手持ちのことばを十分に使って、周囲とコミュニケーションする喜びを味わうこと。

それ以外のかたちでことばが育っていくことはありません。

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いま、ここにある力を使って

こどもたちは育ちのなかで、たしかに次々と新しい力を身につけていきます。

今日できないことも明日にはできるようになっているかもしれません。

だけど、誤解のないように気をつけておかなければならないのは、先にもいったことですが、人は明日に身につくかもしれない力で今日を生きるわけにはいかないということ。

あたりまえのことですが、だれもがそのときそのときの手持ちの力で生き、そのことによってはじめて次の力は身につくのです。

明日に出てくるかもしれないことばの力に目を向ける前に、まずはこどもが手持ちのことばの力を十分に使って楽しんでいるかどうか。

それがことばの育ちの基本です。

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そもそもことば以前のところで、まなざしを交わし、笑顔を交わし、泣いて怒りを表し、抱いて怒りをなだめ、ことばにならない声でやりとりし、身体を使ってともに遊ぶ……

そうしたことば以前のコミュニケーションの広がりがなければ、ことばが生まれてくることはありませんし、さらにはことばを十分に交わしあうようになっても、その背後に身体にしみこんだコミュニケーションの根がなければ、たがいの共同世界は空疎なまま、立ち枯れしてしまいます。


大人になって、ことばがあたりまえのものになってしまうと、とかくこのことばがつねに身体によって支えられていることを忘れてしまいがちですが、親になり、わが子のなかからことばが立ち上がってくる姿にあらためて立ち会うと、ことば以前のコミュニケーションの豊かさ、その根本性にあらためて気づくものです。

(「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」115号『親になるまでの時間・前編』より)

「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」115号『親になるまでの時間・前編』

「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」116号『親になるまでの時間・後編』

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この記事を書いた人
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『親になるまでの時間 前・後編』(浜田寿美男)

浜田寿美男 はまだ・すみお
1947年香川県小豆島生まれ。発達心理学・法心理学者。
『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』編集協力人。
発達心理学の批判的...

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