1. 総合トップ
  2. >
  3. ライフスタイル
  4. >
  5. 夫婦・家族関係
  6. >
  7. 素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコ

素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコ

素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコのタイトル画像

奏太が新しい環境に慣れるため、奏太を連れ満の実家で過ごすことになったキリコ。じいじの家で楽しく過ごす奏太だが、プレには行きたくない!と言う。そして近くの公園で出会った男の子、圭吾ともなかなかうまく行かず…。

素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコの画像1

第24話 side キリコ


義両親が奏太をスキーに連れてってくれて、私はのんびりできた翌日。

にいにのおさがり補助輪付き自転車に乗った奏太と公園に行くと――。

うわ、やっぱりいたか…。

奏太の自転車を借りたがって泣いてしまった圭吾という名前の男の子と、下の子を抱っこしたママが一昨日と同じように砂場で遊んでいた。


奏太  「あ…」

圭吾  「あ!」


奏太を見つけた圭吾が猛スピードで走り寄って来る。

は、はやい…!


圭吾ママ「あ! 圭吾!」


圭吾ママが慌てて立ち上がる頃には圭吾は奏太の目の間に来ていた。


素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコの画像2




そして突然、奏太に手を差し出すから、私もちょっとびっくりして「どうした!?」と思わず声に出す。


圭吾 「じてんしゃ貸して。これ貸してあげるからね」


…ん? なんだ?

圭吾の手には赤色のソフビ人形が握られている。

これがもしやこの間言ってたレッドコマンドかな?

確かに奏太の自転車と配色が同じだわ。

納得していると、エルゴで抱っこした赤ちゃんの足をゆらゆら揺らしながら圭吾ママが近づいてきた。


圭吾ママ「こら、圭吾! すみません…」

キリコ 「いえいえ…」

圭吾  「ねーえ、じてんしゃ貸して。これ貸してあげるって言ってるでしょ」


奏太はレッドコマンドをチラリと見て、そっぽを向く。


奏太  「…いらない」

圭吾  「なんで!」

奏太  「…あっちいって」

キリコ 「こら、奏太!」


興味ないからってそんな言い方はよろしくない。

そんなんじゃ4月からの幼稚園生活が心配だわ!

素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコの画像3

悲しそうにレッドコマンドを見つめている圭吾に気づき、私はしゃがみこんで圭吾に視線を合わせる。


キリコ 「これ好きなの? かっこいいね」

圭吾  「うん、レッドコマンド!」

奏太  「かっこよくない!」

キリコ 「ちょ…」

圭吾  「かっこよくないって言った!」

キリコ 「あー、ごめんね。ちょっと奏ちゃん、ごめんねしなよ」

奏太  「だって東西線のほうがかっこいいんだもん」


あーもうお互いの好きなものを認めようぜ。平和に遊ぼうよ。

すると圭吾ママが少し腰をかがめて奏太に微笑む。


圭吾ママ「東西線…っていうのが好きなんだね。どこを走ってる電車なの?」

奏太  「…」

キリコ 「あ、東京の…」

圭吾ママ「あーそうなんですね。奏太くん、詳しいんだね、すごいね」


素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコの画像4




圭吾ママと一切目を合わせようとしないけど、やっぱり口元がニヤついてるじゃないの。

素直に喜べばいいのになぁ。誰に似たんだろ。


奏太  「だってぼくはいーっぱいでんしゃ乗ったことあるもんね、ママ」

キリコ 「あー…そうかな?」

圭吾ママ「すごーい。東京に行ったことあるんだぁ」

キリコ 「…あ、家が埼玉なんです。夫の実家がすぐそこで」

圭吾ママ「あぁ、そうなんですね。……」


そう言ったあと圭吾ママがハッとした表情になり、私をじっと見つめてきた。

…ん? 何か顔についてますかね? 髭…生えてましたかね?

おや、目が泳いでますよ? ちょっと待って。

なんか変なこと言っちゃったかな?

ほんの数秒の間固まっていると、圭吾ママがゆっくりと口を開いた。


圭吾ママ「あの…間違ってたらすみません」

キリコ 「…なんでしょう?」

圭吾ママ「この間、桜葉幼稚園のプレに来てませんでしたか?」

キリコ 「え? あ、はい! 行きました」

圭吾ママ「あー、やっぱり。同じクラスでした。泣いちゃってたから…」


え、あー…。あの場にいたんだー。

なるほど…。

ってことは、圭吾は同い年なのか。

奏太と背格好が同じくらいだもんね。


キリコ 「うちだけでしたよね。泣いてたの…」

圭吾ママ「いえいえ! うちも教室の中で泣いてましたよ。園庭の滑り台がやりたくて」

素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコの画像5

話ながら思わずうつむいていた私は驚いて顔を上げる。


キリコ 「え! そうだったんですか? いっぱいいっぱいで気づきませんでした」

圭吾ママ「男の子はなかなか座ってられないですよね。ちゃんと先生のお話を聞ける子を見て、驚いたくらいです」


あー、そうだったのかー。

やっぱりそうだよね。

あー、なんかほっとする。


圭吾  「ねぇ、じてんしゃ貸して! ぼく、救急車も持ってるからー」

奏太  「いやだ! あっちいって!」

圭吾  「…う、わーん!」


…まだ続いてる。


奏太  「ママ! はやくあっちいこう!」

キリコ 「えー…すみません、じゃあ」

圭吾ママ「はい、じゃあまた」


微笑んで手を振ってくれて、私も思わず振り返す。

話しやすい感じだったし、もっといろいろ話してみたかったのになぁ…。

なんで子どもたちはもめてんのかなぁ…。

素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコの画像6

翌日もなんだかんだ言いつつ、公園に行きたいという奏太と向かうと、圭吾親子の姿はなかった。

奏太は明らかにきょろきょろして何かを探して…ますよね?


キリコ 「どうしたの?」

奏太  「…どうもしない」

キリコ 「ふーん。ねぇ、奏ちゃん」

奏太  「なあに? ママ」

キリコ 「今日さ、桜葉幼稚園の園庭開放の日なんだ。あー、だからさ、幼稚園で遊べる日なの。パパが言ってた滑り台で遊べるんだよ」

奏太  「…」

キリコ 「行ってみる? 圭吾くんは桜庭に行ってるのかもよ? 奏太も行ってみ…」

奏太  「いかない」


…即答かよ。

ぐいぐい来られたのがそんなにイヤだったのかなー…。

背丈も同じくらいで、月齢とかも近そうな男の子だから仲よく遊べるといいなぁ、と思うけど…。

それにあの滑り台、奏太は好きだと思うんだけどなぁ。

行っちゃえば楽しめると思うんだけどなぁ。

子どもたちが園庭で楽しく遊んでるところを見たら、遊びたくなるかな?

せっかく義実家で連泊してるんだから、やれることはやってみよう。


キリコ 「ねぇ、奏ちゃん。今日は冒険しない?」

奏太  「ぼうけん?」

キリコ 「そう。行ったことない道を通ってみるの」

奏太  「なんで?」

キリコ 「なんでって…。だってさ、何かお店があるかもしれないよ? お菓子屋さんとかおもちゃ屋さんとか。探しに行ってみようよ」

奏太  「うーん、いいよ!」


補助輪をガラガラと鳴らしながら奏太と私は幼稚園の方向へと進んだ。

少しずつ子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてきて、奏太はそこが何か気が付き自転車を漕ぐのを止めてしまう。


素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコの画像7




奏太  「やっぱりこっちに行かない」

キリコ 「大丈夫。中には行かないから。通るだけだよ」

奏太  「やだ」

キリコ 「中には行かないんだからいいでしょ? ほら」


通るだけだもん、いいじゃない。

私も見たいんだよね、どんなママがいるのか。

この間のプレはまったく余裕なかったから…。


奏太  「マーマ。マーマ! 待って!」


後ろでわーわー言っている奏太に何度か振り替えつつも足を止めない私に慌てたのか、奏太は再び自転車をこぎ始めた。

園庭の見えるところまで行き、中を覗くとやっぱり圭吾親子の姿があった。


キリコ 「ほら、やっぱり圭吾くんいるよ」

奏太  「え? どこ?」

キリコ 「あそこ。滑り台の階段のところ」


奏太に分かるように指をさすと、それに気づいたのか圭吾ママが私たちを見て、笑顔で頭を下げる。

…ママグループが何個かできてるけど、圭吾ママは一人でいるなぁ。

なんでだろ?

圭吾も一人で遊んでいる。

不思議に思いながら圭吾ママに頭を下げていると、私たちを見つけた先生が走り寄ってきた。


先生 「奏ちゃん、また来てくれたの? 遊ぼう」


先生に誘われてしまった奏太が慌てて自転車をこぎだしてしまう。


キリコ「あ、奏太!」

先生 「奏ちゃん、待って待って!」


ダッシュで奏太を捕まえた私の元に、先生がやってきて、「回数券」と書かれた手作りの紙を差し出してきた。


先生 「土曜日、第二小学校でバザーがあるんです。そこで使える券です。プレに来てる子に渡していて。前回お休みだったから」

キリコ「ありがとうございます!」

素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコの画像8

――そして土曜日。夫が岐阜に来る前に私と奏太はバザーに行ってみることにした。

グラウンドにもいろいろと、子ども模擬店が出ている。

ここは夫が卒業した小学校。

もしあの白い家を買ったら奏太も通うかもしれない小学校なんだよなぁ。


奏太  「ねぇママ! これやりたい!」


中古のおもちゃがもらえるクジコーナーがあって、そこに山手線の模型があった。

あれはNゲージだろうか。

そういうことに詳しくなってしまった自分が笑える。


キリコ 「じゃあ、先生にもらった券でやろうか」

圭吾  「あ! そーたくんだ!」


聞き覚えのある声がして振り返ると、そこには圭吾親子が立っていた。


奏太  「あっちいって!」

キリコ 「こらっ!」


実は昨日も奏太と圭吾は公園でもめたのよね。

木の枝を取り合って…。枝なんてほかにもあるのに…。意味わからん…。


圭吾  「あ! ぼく、あの剣ほしい、ママ!」

圭吾ママ「じゃあ圭吾もやろっか」

圭吾  「うん!」

奏太  「…でんしゃの方がかっこいいし」

圭吾ママ「奏太くんは、あの電車がほしいの?」

奏太  「…」

キリコ 「あ、そうみたいです」

圭吾ママ「当たるといいね」


素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコの画像9




何も答えない奏太を見ていると、圭吾が私の脇腹を小さな指でつつく。


圭吾  「ぼくはね、あの剣がいい。シャッキーン! ってやるんだよ」

キリコ 「そっか。かっこいいね」

奏太  「ママ! ぼくが先にやるの。はやくして」


何をそんなに張り合ってるんだか…。

考えてみると、奏太がこうやってムキになるの珍しいな。

いつもは無言か、やっと仲良くなったら少しずつ遊びだすか、なんだけど。


圭吾  「ぼくもやりたい!」

奏太  「あっちにいって!」

圭吾ママ「奏太くん、先にどうぞ」

キリコ 「すみません…」


手作りの箱の中に手を入れ、奏太が一枚の紙を取り出す。

紙には「8」と書かれ、「8」のシールが貼られたおもちゃを役員のお母さんが差し出してくれた…。

素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコの画像10

奏太  「あ…」


まさかの圭吾がほしがっている剣じゃないの。


キリコ 「奏ちゃん、圭吾くんにあげたら?」

奏太  「…いやだ!」

圭吾  「………」

圭吾ママ「ほらまだシャボン玉とか、ボールとかあるし、くじやってみよう?」

圭吾  「…うん」


あぁ、もう…。圭吾、しょんぼりしてるから。

剣をあげたらいいのに。

どうしてできないかな。

モヤモヤしているうちに圭吾がクジを引き、そしてまさかのまさか。

奏太がほしがっている山手線の模型が当たってしまった。

わー、こんなことってあるのね。

これは神様のいたずらなのかもしれない――。

素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコの画像11

▶︎▶︎ 次回、25話は、5/8(火)20時公開予定!

素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコの画像12

当社は、この記事の情報、及びこの情報を用いて行う利用者の行動や判断につきまして、正確性、完全性、有益性、適合性、その他一切について責任を負うものではありません。この記事の情報を用いて行うすべての行動やその他に関する判断・決定は、利用者ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。また、表示価格は、時期やサイトによって異なる場合があります。商品詳細は必ずリンク先のサイトにてご確認ください。

この記事を書いた人
さいとう美如の画像
さいとう美如

フリーライター。映像作家の岩井俊二に師事し、2005年にラジオドラマで脚本家デビュー。映画『虹の女神』、恋愛スマホゲーム『花婿ロワイヤル』、そのほか小説、漫画原...

  1. 総合トップ
  2. >
  3. ライフスタイル
  4. >
  5. 夫婦・家族関係
  6. >
  7. 素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコ